施術のリスクとどう向き合うか

モルフォセラピー

2022年06月01日 10時00分

施術のリスクとどう向き合うか

カテゴリー: モルフォセラピー

以前ある治療家の元へ、重い腰痛の患者が訪れた。あまりにひどい背骨のズレを見て、思わず彼は「これは大変でしたね」と口にした。するとその患者ばかりか、付き添ってきた母親までが「やっとわかってもらえた」といって涙ぐんだのだという。まだ何の治療もしていない段階でこれほど感激されるとは、その苦しみはよほどのことだったのだろう。


たしかに背骨のズレによる症状は、どれだけ病院を渡り歩こうが、どんな検査を受けようが、決して診断に至ることはない。病院での検査には、背骨のズレという項目は存在しないからだ。病院での検査で問題が見当たらなければ、医師たちには治療するどころか診断すらできない。すると医師は「(この状態で)痛いはずはないんですけどね」などといって、患者の切なる訴えを否定することもある。


そこで患者が自分の症状を強く主張してみたところで、その症状は精神的なものだとかんたんに片付けられてしまう。かくして柳澤桂子の『認められぬ病』のように、患者の孤独な闘いが始まるのである。その一方で医師たちは、自分たちにとって原因不明の症状に出会うたび、現代社会のひずみがいかに人体に影響を及ぼしているかを説き続けることになる。


実はこういった状況は日本だけに限った話ではない。背骨のズレが原因の「認められぬ病」の患者は世界中にあふれているのだ。しかし彼らがモルフォセラピーに出会う確率はかなり低い。運良く巡り合えたとしても、すべての人がその苦しみから解放される保証はない。

もちろん背骨のズレによる症状は、そのズレた背骨を正しい位置に戻せば解消する。これは至ってかんたんなメカニズムである。だがズレた背骨を矯正することには、思わぬリスクが伴うこともある。


たとえば肩たたきは、だれもが一度は体験していることだろう。相手の肩をたたいたり、逆にだれかにたたいてもらったりすることで、肩たたきには治療と同時にスキンシップの要素もある。その肩たたき程度のことで、よもや危険が及ぶなどとはだれも思いもしない。肩たたきのせいで血流が突然変化して、貧血のような症状が起きたなどという人もいないはずだ。ところがモルフォセラピーでは、そのようなことが起こり得る。しかも肩たたきの10分の1ほどの力も使わず、ほんの一瞬触っただけでも起きることがある。


かつて私にもその経験があった。肺がんと心筋梗塞の病歴をもつ方が来院されたので、体を見ると胸椎3番と4番が極端にズレていた。このズレが、肺がんと心筋梗塞の発症に関与しているようだった。


しかし私は慎重かつ臆病なので、そんな病歴がある人の背骨のズレをいきなり戻すようなことはしない。かなり用心しながら少しずつ矯正していく。そのときもわずかに指が触れた程度だった。それなのに、あれほど極端だったズレが、一瞬で見事に収まってしまったのである。途端に彼の顔に赤みが差した。それと同時に私の顔からは血の気が引いた。彼は「血がグルグル回っている」といって、経験したことのない血流の変化にとまどっている。


この状態は、それまでせき止められていたダムの水を一気に放流したようなものだ。勢いよく流れていった先で、どのような変化が起こるかを完全に予測することはできない。このときは、横になって少し休んでいてもらったら落ち着いたのでホッとした。今思い出しても冷や汗の出る体験だ。


モルフォセラピーは、よく切れる刃物のようなものである。触れるか触れないか程度の力でも、矯正の角度と力の向かう方向が的確なら、とんでもないズレでもたちまち矯正できてしまう。背中のかゆいところを一かきした程度のわずかな力であっても、急激な血流の変化が起きることがある。こんなことは常識では考えにくいだろう。


こういった変化がすべての人に起こるわけではないが、どのような状況ならリスクがあるかを完全に見極める方法もない。モルフォセラピーで背骨のズレを戻すことはたやすいが、そのズレを今、どの程度まで戻してよいかの判断がむずかしいのだ。私の経験上は、甲状腺疾患の人、体内にステントを入れている人、虚弱体質の女性などには、極端な血流の変化によって、妙な症状が起こりやすいようである。


実際のところ、人体に外から力を加えると何が起きるのか。それがわずかな力であっても、その衝撃が体内に引き起こす結果をすべて把握することは、最先端の科学でも不可能だろう。


自分の目の前に、途方もなく高額で世界に1台しかない精密機械が置かれたとする。それをいきなりたたいてみる人などいない。壊れてしまったら取り返しがつかないから、まずは「手を触れないようにしよう」と考えて距離をおくはずだ。ヒトの体についても同様で、手を触れずにすむものなら、それに越したことはない。施術においてはそういうわけにもいかないのが悩ましいところである。


私の古い知り合いに、カースタントで有名なTさんがいる。彼は長年の仕事を通しておびただしい数の骨折を経験してきた。だがそれは決して無謀なことをしたからではない。彼は常々「イチかバチかで勝負をするのは素人だ。先の先まであらゆるアクシデントを想定したうえで、安全に仕事をこなすのがプロフェッショナルなのだ」といっている。従ってその骨折もやむを得ぬシチュエーションの結果なのである。


「あらゆるアクシデントを想定したうえで安全に仕事をこなす」


私も、これこそがモルフォセラピーの第一義であるべきだと肝に銘じている。(花山 水清)


2022年05月04日 10時00分

間質性肺炎の咳や胃潰瘍の痛みへの対応

モルフォセラピーの手技はいたってかんたんである。私の書いた本や手技のDVD、ネット配信の動画を見ただけで、ある程度マスターしてしまう人もいる。介護の仕事に、モルフォセラピーを取り入れているSさんもその一人だ。


 モルフォセラピーのDVDを見たSさんは、高齢者施設でお年寄りの世話をしながら、背骨のズレを見つけてはすかさず治すことを日課にしている。
 当のお年寄りたちは、やさしく背中をさすってもらっているとしか感じていない。それでも日常の動作の一つとして、背中をさすりながら矯正しているうちに、みな元気になっていくのがSさんにはわかる。今までほとんど歩けなかった人が、歩けるようになったこともあった。だれに褒められるわけでもないが、やさしいSさんとしてはお年寄りが元気になるのがうれしくてたまらない。ますます介護にもやりがいが増しているようだ。


 このようにモルフォセラピーというのは、たとえだれかに直接教わらなくても、日々実践していれば必ず上達する。実践を重ねた経験こそが上達の秘訣なのである。


 そんなSさんが、あるときおもしろい発見をした。
 いつものように高齢者の体に触れてみると、感触が他とはちがっているところがある。そこだけ弾力が失せているのだ。その部分を注意深く指先で探っていくと、奥にブツブツとしたものがあるのを感じた。そこで弾力のない部分の中心に向かって、まわりから指先でそっと圧をかけてみた。すると弾力の失せた部分に、少しずつ張りが戻ってきたのである。
 Sさんにはそれが何なのかはわからなかったが、張りが戻ったのは悪いことではないと感じたという。この話を人づてに聞いて、私はたいへんうれしかった。


 モルフォセラピーの目的は、背骨のズレの矯正による「アシンメトリ現象」の解消である。しかし疾患の原因の全てが背骨のズレというわけではない。背骨のズレが原因でなければ、その症状に対しては全くちがったアプローチが求められる。今回のSさんが行なった手技もその一つである。彼はだれにも教わらないのに、自然にこの技術を会得したのだった。


 それでは彼が行なった手技とはどのようなものだろうか。
 体の組織というのは、健康体であればどこに触れても同じように感触は均質だ。ところが「アシンメトリ現象」では、左の起立筋が右に比べて緊張して硬くなっている。また打撲などの場合は、組織が部分的に硬く腫れ上がる。


 それとは逆に、Sさんが見つけたように組織の弾力が局所的に弱まっていることがある。たとえば、かつて肺炎や結核を経験した人の胸部を見ると、病巣があった辺りは弾力が失われてへこんでいる。過去にそのような病歴がないのであれば、肺がんではないかと疑うことになる。つまり組織の張りがなくなっているのは、現在何らかの病巣があるか、かつて炎症を起こした痕跡だと考えられるのだ。
 そして何らかの炎症があると、Sさんが見つけたようにブツブツとしたリンパの腫れらしきものが指先に当たる。この感触の有無が、その状態が正常か異常かを見きわめる目安にもなる。


 最近、新型コロナウイルスによる肺炎が問題となっているが、もっとも治りにくい肺炎に間質性肺炎がある。間質性肺炎は、抗がん剤などの薬物投与によって引き起こされる肺炎である。
 この間質性肺炎にかかって以来、咳が止まらなくなっている男性がいた。彼は病院で、ありとあらゆる治療を試みたが一向に咳が止まらない。あとは自然治癒を待つより他に手がない状態だった。


 実は間質性肺炎による咳だと診断されていても、その咳の原因は単なる胸椎のズレだったということは多々ある。そのため、原因となっている胸椎のズレを矯正すれば咳が止まる。ところが彼には、犯人らしき胸椎のズレが見当たらない。しかし肺そのものの異常が、咳の原因となっていることは明らかだった。


 咳が続いている場合、胸椎がズレていなくても肺の周辺には何らかの異常が見られるはずである。そう考えて彼の胸部を丹念に調べてみると、第3胸椎から第5胸椎の右側の部分だけ、組織の弾力が消えていて明らかに張りがない。


 こういう状態のときは、その弱った組織に向かって周囲から指先で軽く1分ほど圧をかける。さらに圧をかける方向を次々に変えながら、この動作を何度も繰り返す。すると弱っていた組織の部分に張りが戻ってくる。それと同時に、それまで散々彼を苦しめていた咳も止まった。「あ~空気が奥まで入っていく!」といいながら、彼は深呼吸してこの大きな変化におどろいていた。
 もちろんこれで間質性肺炎が治ったわけではない。だが、ひどい咳を止めてあげることで炎症がおさまれば、自然治癒が早まる可能性も出てくるのだ。


 咳だけでなく、胃潰瘍の激しい痛みに対してもこの手技で対処できる。まずは背骨のズレの有無を確認し、ズレの矯正を行なったあと、患部付近にそっと圧をかけて炎症を抑えてやると、症状が緩和されるので試してみるとよい。


 そういえば私は年齢のせいか、ここのところ誤嚥の回数が増えた。米粒のような小さなものが気管に飛び込んで、激しく咳き込んでしまうのだ。誤嚥性の肺炎は、高齢者などではしばしば命取りになるから油断できない。私の場合、誤嚥したときにはいつも第5頚椎の右側あたりにしこりができる。そのしこりに指先で圧をかけ続けると、必ず誤嚥したものがポロッと出てくる。


 こういった手技はだれでもできる単純なものなので、背骨のズレの矯正とあわせて使えば、より多くの場面に対応できて心強いだろう。モルフォセラピーは、その実践者がそれぞれ工夫した技術を研究会などで共有し、そこからさらに進化させ続けていくことが望ましいと私は思っている。(花山 水清)


2022年04月06日 10時00分

「神の手」から「神の手の内」へ

私は「アシンメトリ現象」の解消を目指して、20年以上にわたって人体と向かい合ってきた。その集大成がモルフォセラピーとなり、今では多くの方に実践していただいている。


 モルフォセラピーの習得者には医師や理学療法士、柔道整復師などの医療のプロだけでなく、アマチュアのままで活躍している人も大勢いる。そのなかの一人のMさんは、この技術を仕事先での信頼構築に活かしているそうだ。


 あるときMさんは、商談中のお得意様が腰痛で苦しんでいるのに気がついた。そこで「少し腰に触ってもいいですか」と了解を得てから、すかさず腰椎のズレを見つけ出し、その場でサッと戻してしまった。ほんの数分でたちまち痛みが消えたので、驚いたお得意様は思わず「神の手だ」とうなったという。これでMさんに対する信頼も大きなものになったことだろう。


 実はこんな話は、モルフォセラピーの実践者にとっては珍しいことではない。「神の手」とは治療効果に対する最大級の褒め言葉である。だがモルフォセラピーを実践している人なら、だれでも一度はこの称賛を耳にした経験があるはずだ。
 
 世には自称「神の手」もあまた存在する。また治療家を志す者の多くは、「神の手」となることで業界のカリスマを目指そうとするものだ。しかし今はそんな時代ではない。たかが腰痛を治した程度で有頂天になるようでは、あまりにもスケールが小さい。日本モルフォセラピー協会では、世界中を「神の手」で埋め尽くすべく「神の手」の大量育成を目指しているのである。


 もちろんどれだけ「神の手」を生み出したとしても、本物の神の手を創れるわけではない。神ならば、100%全ての腰痛を治せなくてはならないからだ。それでも神に近づこうとする努力は評価されるべきである。


 では実際のところ、モルフォセラピーの効果はどれほどなのだろう。モルフォセラピー医学研究所関野吉晴先生は、腰痛に対するモルフォセラピーの有効性は7割ほどではないかと話していた。私もだいたいそれぐらいではないかと思っている。本物の神には及ばないとはいえ、有効性7割は医学的常識から見れば信じがたい数字である。
 通常の医療では、プラセボ効果の3割を超えさえすれば治療効果ありと認められる。野球なら3割を超えれば強打者だが、7割バッターなどあり得ないのだから、モルフォセラピーの効果には自信をもってよい。


 しかし野球とちがって、民間療法の世界では加算方式ではなく減算方式で評価される。効果が現れなかった3割の人にとっては、7割の有効性など関係ないどころか、全否定の対象となる。こちらでは「神の手」とあがめられる一方で、あちらでは不審な目で見られてしまうのである。


 それではなぜ治らない人がいるのだろうか。施術者の単なる技量不足を除くなら、答えは大きく3つに分けられる。


 1つ目はかんたんな話で、その症状の原因が背骨のズレではない場合である。これは案外少ないが、ある一定数は存在している。


 2つ目は、患者の安全性を考慮して、施術者が安易には手を出せないケースだろう。具体的には、患者が妊婦や成長期の子供であるとか、骨粗鬆症、がんの骨転移、血栓、動脈瘤などがあるときだ。


 患者本人から「大丈夫だからやって」と強くいわれることもあるが、この状態の体に触れること自体に危険が伴うので、信頼関係のある家族以外は手出しすべきではない。
 またモルフォセラピーのように微細な力でなければ、さらに危険であることはいうまでもない。だが医学知識のない人は、施術を受けることにリスクがあるという認識がない点も知っておきたい。


 そして3つ目は、矯正の効果がその場ではわからなかった場合である。モルフォセラピーの有効性7割とは、あくまでも矯正直後の話なのだ。しかし施術の場では効果が実感できなくても、数時間後や翌朝に症状が消えていることは多いものである。


 しかし患者としては、その場で効果が感じられなければ満足度が低い。翌日になってから症状が消えていることに気づいても、「自然に治ったのかな」という程度にしか認識してもらえない。それが施術者としては悩ましいところなのである。


 ある整形外科医の本には、半年後の追跡調査の結果まで治療効果の実証データに含めていた。半年もたってからでは、腰痛が治ったのは自然治癒だった可能性も大きいはずだ。これが民間療法であれば、半年後の結果など全く評価に値しない。こちらの世界はそれほど甘くはないのである。


 このように見ていくと、「治らなかった」とされる背景には一定の傾向があることがわかる。失敗の法則を見つけるのはたやすいものだ。逆にいえば、成功は偶然にでも起こる。しかし治った理由が「たまたま」であってはならない。


 そこであえて、なぜ治ったのかの理由を極限まで掘り下げていく必要がある。そのしくみを解明することが、人体の普遍的な法則の探究になるのだ。モルフォセラピーでは、それが「アシンメトリ現象」の発見につながった。


 したがってわれわれは、決して「神の手」と呼ばれることに安住してはならない。各自が技術の安全性や効率を高めるだけでなく、施術を通して「神の手の内」まで知り尽くそうと努力することが最も重要なのである。(花山 水清)


2022年03月02日 10時00分

頭痛のタネと片頭痛

カテゴリー: モルフォセラピー

悩みごとの原因を体の痛みになぞらえて「頭痛のタネ」と表現することがある。この場合は実際に頭が痛くなるわけではない。しかし頭痛そのものが「頭痛のタネ」だという人は少なからずいる。


 一口に頭痛といっても、その原因はくも膜下出血のような重大疾患から、睡眠不足や二日酔いに至るまでさまざまだ。頭痛のなかでも最も一般的なのが片頭痛だろう。片頭痛はその字の通り、頭の左右どちらか片方にズキンズキンと血管が拍動する痛みが生じる。
 医学的には頭部の血管が拡張することで片頭痛になると考えられているが、その大本の原因が解明されているわけではない。そのため痛みの根本にアプローチするような治療法も確立されていないのである。


 ところが最近、片頭痛の原因に作用するといわれる3種類の新薬が発売された。これらは血管拡張性神経ペプチド(CGRP)の受容体に作用することで片頭痛に効果があるという。私はこの薬の記事を読んで、20年ほど前に発売されたイミグランのことを思い出した。イミグラン(スマトリプタン)はセロトニンの受容体に作用して片頭痛に効果を発揮する画期的な薬だと大々的に報じられていたのだ。


 イミグランと今回の新薬とは作用する受容体がちがうだけで、両者とも血管拡張を抑える働きをする点は同じである。ただイミグランとちがって、新薬では今のところ大きな副作用は報告されていないようだ。これで片頭痛から開放されるのなら朗報なのだが、まだこれだけで「頭痛のタネ」が消えるわけではない。そこで今回はモルフォセラピーとして片頭痛を考察してみたい。


 ご存じのように片頭痛はモルフォセラピーの矯正の対象である。もちろん片頭痛の原因となっている頭蓋や頚椎のズレの方向が、胸椎や腰椎と同様に左一側性であることに変わりはない。また、ズレによる症状が左右のどちらにでも出る点も同じである。しかし片頭痛の症状が右に出るか左に出るかによって、その矯正法ははっきりとちがうものになる。


 たとえば頭の右側に痛みがあるとき、頭を斜め左に倒して第1頚椎と第2頚椎の棘突起の右側にしこりがあるのが指先に当たるなら、これは頭蓋と第1頚椎がズレているのである。この場合、頭を右に倒してみても左側にはしこりがない。それが確認できたら通常通りに矯正する。ズレ幅が小さいようなら、しこりに指先で圧をかけ続けるだけでも症状が消えるはずだ。


 片頭痛に限らず、ほとんどの頭痛は主に頭蓋や頚椎1番、頚椎2番あたりのズレに起因している。そのズレによって椎骨動脈や頚動脈に機械的な力が加わると、頭部に動脈炎のような症状が現れる。これは体のどこかを打ち付けたとき、ズキンズキンと拍動する痛みが出るしくみにも似ている。


 ところが頭蓋や頚椎のズレは血管だけでなく交感神経をも刺激するので、興奮した交感神経の作用によって血管は収縮する。従ってズレを矯正すると、交感神経の作用が収まって血管が拡張することになる。これは医学的な説明とは正反対の結果なのである。


 先述したように、医学的には片頭痛の原因は血管拡張だとされている。だからこそ薬によって血管を収縮させれば症状が抑えられると考えるのだ。しかしズレという現象を基準にするなら、やはり私には血管拡張が片頭痛の原因だとは考えられないのである。


 血管拡張と聞くと、私たちはホースが膨らむように均等に血管が広がっている姿をイメージする。しかしそのように血管が拡張しただけで片頭痛が起こるものなら、だれもが毎日片頭痛を体験していなければならない。しかも単なる血管の拡張が原因ならば、なぜ痛みが左右の片側だけに出るのかの説明もつかない。片頭痛のしくみはそれほど単純ではないはずだ。


 では片頭痛発生時の血管には、どのような変化が起きているのだろうか。
 片頭痛と似た症状に三叉神経痛がある。三叉神経痛も片頭痛と同じく頭蓋や頚椎のズレによって引き起こされている。これらのズレを矯正することで症状が消える点からみても、症状と原因との因果関係は明白だ。そしてこの三叉神経の興奮が、強力な血管拡張作用をもつCGRPの放出の引き金であることも知られているのである。


 これらのことから何がわかるだろう。
 まず頭蓋や頚椎のズレによって交感神経が刺激されると血管が収縮する。しかしその際、ズレは三叉神経をも刺激してしまうため、CGRPの放出によって血管が拡張する。拡張した血管は、頭蓋や頚椎のズレの部分で圧力が増すことになる。これが痛みを引き起こしているのである。
 このようなストーリーによって片頭痛が起きると考えれば、血管の拡張、収縮と片頭痛の有無のつじつまが合う。片頭痛の症状が左右の片側だけに現れる理由も、そこにズレが介在しているからなのだ。


 しかし「頭痛のタネ」は他にもまだ残っている。仮に新薬が効果を発揮したとしても、それは一時的な症状の緩和に過ぎない。頭痛の原因となっている頭蓋や頚椎のズレが解消されなければ、患者は薬に依存し続けることになってしまう。その頭痛薬への依存が新たな頭痛を生んでいることも、医学的には周知された事実なのである。


 それだけではない。頭蓋や頚椎のズレによる血管への刺激が続くことは動脈硬化の原因にもなり得る。そのような状態で頭痛薬によって血管を収縮させ続けていると、いずれは脳血管障害を発症する危険性まであるのだ。


 従ってモルフォセラピーにおいても、片頭痛や慢性頭痛の患者への施術には特に注意したい。ズレの矯正によって急激な血管拡張が起これば、一過性の脳虚血発作を引き起こす可能性もゼロではないからだ。
 少なくとも初めての患者に対して「一発で決めてやろう」などと意気込むことは控えたい。モルフォセラピーの効果を確信しているからこそ「安全第一」を旨とし、はやる功名心を抑え込む謙虚さを忘れないでおきたいものである。(花山 水清)


2022年02月02日 10時00分

胸椎のズレによる心臓の異常はなぜ増えているのか

昨秋(2021年)、厚生労働省から新型コロナウイルス感染症のワクチン接種による心筋炎への注意が呼びかけられていた。心筋炎とは、ウイルスなどによって引き起こされる心臓疾患であるが、この心筋炎とは別に、私が最近気になっているのは、心臓の異常を訴える人が増えていることだ。狭心症のように心臓の鼓動がトトトトッと速く打ち、それと同時に胸の痛みや息苦しさを感じる人がやたらに多いのである。


 狭心症はほとんどの場合、高血圧による動脈硬化が原因だとされている。しかし私が指摘している狭心症的な症状は、主に第4胸椎が左にズレていることが原因だ。
 胸椎がズレると肋骨が押し出されて体幹にひねりの力が加わる。第4胸椎がズレると、そのひねりの力は体幹の中心に位置する心臓にまで及ぶ。その結果、狭心症のような症状が現れるのである。


 また胸椎のズレによって肋骨が押し出されることで体幹に局所的なひねりの力が働くと、肋間筋が引きつる。これが息苦しさや胸苦しさなどの原因になっている。
 従って、そのズレている胸椎を正しい位置に戻すことでこれらの症状は消える。この事実から見ても、ズレと症状との因果関係は明らかだろう。


 実は狭心症が悪化した状態の心筋梗塞患者にも、この第4胸椎のズレが認められる。狭心症と心筋梗塞は虚血性心疾患としてくくられているが、これらの虚血性心疾患には第4胸椎だけでなく第1胸椎のズレも影響している。
 第1胸椎のズレが腕神経を刺激した場合、虚血性心疾患に見られる左肩や左腕への放散痛と同じ症状が出るのも偶然ではない。また第1胸椎のズレが頸動脈や椎骨動脈を圧迫して血流を阻害することで、動脈硬化の原因の一つにもなり得るのである。


 さらに第1胸椎が左にズレると、肋骨と連動して左の鎖骨が左へとズレるとともに、押し上げられる形で頭頂方向へも移動する。すると鎖骨の下を通っている心臓神経を直接刺激して、心臓に異常を引き起こす。
 ズレによる影響はそれだけに留まらない。左の鎖骨の下にはリンパ本管が流れ込む胸管があるため、ズレた鎖骨による圧迫がリンパ液の還流を悪化させ、より複雑な病態を引き起こすことになる。
 この状態が続くと左の鎖骨のくぼみが消えてしまう。これは「アシンメトリ現象」がかなり進行した状態の特徴で、目で見てはっきりと確認できる。


 しかしこのような胸椎などのズレが引き起こす心臓への異常が病院で指摘されることはない。私の印象では今や腰痛患者よりも多くなっているのに、腰痛とちがって一時的な症状であるため、いつしか本人も症状があったことすら忘れている。私から心臓に何か異常がなかったかと訊かれて初めて「そういえば…」と思い出す人が多いのだ。
 まして今現在、心臓に何の症状も出ていなければ、病院を受診しようなどとは思わないだろう。だがたまたまこれまで症状が出ていなかっただけなので、胸椎が大きくズレたままでゴルフなどで勢いよく体幹をひねってしまったら、突然死も起こり得る。


 それではなぜ胸椎のズレによる心臓の異常がこれほど増えているのだろうか。うがった見方をすれば、放射線被曝の影響も考えられる。
 チェルノブイリでの原発爆発の後、近隣住民に心筋梗塞が増えたことが知られている。福島第一原発の爆発事故から10年が過ぎた日本でも、すでに同様のことが起きていると指摘する人もいる。私にはそれが事実かどうかを確認するすべはない。しかし胸椎が大きくズレて心臓に異常を感じる人が増えていることだけはまちがいない。


 もちろん本来なら、ズレている背骨はことごとく正しい位置に戻すべきである。ところが胸椎の扱いはそれほど単純ではない。胸椎が大きくズレて心房細動を起こしているような場合、そのズレをいきなり戻してしまうと血栓が飛んで、何らかの臓器に塞栓を引き起こす危険性があることは知っておきたい。


 これは胸椎に限ったことではないが、背骨のズレの矯正は重大な結果を生むことがある。それを念頭において施術に臨むことが重要だ。ズレを見つけて戻すだけなら素人でもできる。プロであれば、患者の身体状況の全体像を見極めたうえで、このズレを戻していいものかどうか、そこから始めなくてはならない。そうやって常に思考しながら施術することで、原因の解明にも踏み込んでいただけることを願っている。(花山 水清)


2022年01月05日 10時00分

ふくらはぎが痛い原因と深部静脈血栓

カテゴリー: モルフォセラピー

先日寝ていたら、右脚のアキレス腱からふくらはぎにかけての強い痛みで目が覚めた。前の日に壁のペンキ塗りでハシゴを昇り降りしていて足首を捻挫したのだろうか。


 足首の捻挫には主に2つのパターンがある。一つは足首をひねって外くるぶしに痛みが出るもので、これは誰もが一度は体験しているだろう。もう一つは少し特殊だが、爪先立ちで踊るバレリーナに多く見られる捻挫である。この場合、脛骨と距骨との間にズレが生じてアキレス腱やふくらはぎに痛みが出る。バレエでなくても、爪先から飛び降りたり、ハシゴ仕事などでも同様の捻挫は起こる。


 だがどちらも治療はかんたんだ。足首をもって少し足を引っ張りながら、ゆっくりと正しい位置に戻してやるだけでよい。この矯正がうまくいけば、その場で痛みが消えて少々の腫れならすぐに引いていく。


 もちろんこれらの捻挫は骨や靭帯が損傷しているものを除く。逆に病院では、アキレス腱やふくらはぎに痛みがあっても骨や靭帯に明らかな損傷が見られなければ、それが捻挫のせいだとは考えない。その結果、全く関係のない治療をしてしまうことがあるのだ。


 例えばあるバレリーナなどは、ふくらはぎの痛みで2度もアキレス腱の手術を受けたが、症状が全く改善しなかったため引退を余儀なくされた。他にも、ふくらはぎが痛いのは持病の自己免疫疾患が悪化したからだと診断されて、免疫抑制剤の投与量を増やされた人もいた。だが二人とも、上記の手順で軽く足首を矯正しただけでその場で症状が消えたのである。


 では私のふくらはぎの痛みはどうなったのか。寝床から起き上がるのが面倒だったので、横着をして寝たままの姿勢で矯正を試みた。左足の親指と人差指で、痛みの出ている右足首を挟んで引っ張ってみたのだ。ふつうなら完全でなくてもある程度まで戻すだけで自然に痛みが引くものだからである。


 ところがそのまま寝てしまおうとしたのに、先程よりも痛みが増してきた。あまりの痛みに起き上がって足首を調べてみると、捻挫ではなさそうだ。
 原因が捻挫でなければ、疑われるのは腰椎3番、5番のズレである。腰に手をやると案の定、腰椎3番が大きくズレている。どうも自分の体となるとおざなりだが、とりあえず3番のズレを戻してみると痛みがかなり引いたので眠りについた。そしてあくる朝には完全に痛みは消えていた。


 このようにふくらはぎの痛みというのは、捻挫だと思ったら腰椎のズレだったり、その逆だったり、またそれら両方のこともある。両者の違いは、捻挫なら時間の経過とともに痛みが引いていくのに対し、腰椎のズレであれば時間がたっても痛みに変化がなかったり、痛みがもっと強くなったりしてしまうところだろう。


 また骨折の場合でも捻挫と似たようなことが起きる。病院ではもう骨は治っていると診断されたのに骨折時の痛みがそのまま残っているとき、背骨のズレを戻してやると痛みが消えることがある。これは珍しいことではないので、日ごろの施術で同様の経験をされた方もいるだろう。


 さて、ふくらはぎの痛みで注意しなければいけないのは深部静脈血栓の存在だ。昭和46年(1971年)、当時の横綱「玉の海」が虫垂炎の手術を受けた後に深部静脈血栓を発症し、その血栓が飛んで肺塞栓を起こして亡くなった。まだ27歳だった現役横綱の急死は社会的にも大きな衝撃であったため、このニュースのおかげで一般人だけでなく医療の現場でも血栓の恐ろしさが認識されるようになったのだ。


 その後、深部静脈血栓はエコノミークラス症候群として広く知られるようにもなった。しかし狭い場所で長時間動かずにいることでふくらはぎの部分に血栓ができるので、飛行機に乗らなくても発症する。


 血栓の有無は、ふくらはぎの表面を少しずつなでてみると、指先にわずかに硬い組織が当たることで確認できる。もし患者さんに血栓があると判断したら、即座に施術を中止して循環器科の受診を強く促すべきである。何らかの刺激でその血栓が肺に飛んでしまったら命に関わるのだから、強い刺激を加えることなどもってのほかだ。


 かつて「こんなしこりなんか、もみ切ってしまえばいい」といって、ふくらはぎをゴリゴリもんだ治療家の話を患者さんから聞いたこともあるが、無知ほど怖いものはない。逆にいえば、知識ほど大切なものもない。われわれは施術を通して人の命に関わる以上、医療全般の知識を学び続ける努力だけは怠らないようにしたいものである。(花山 水清)


2021年12月01日 10時00分

医療の進歩をはばむ「ストレス原因説」

カテゴリー: モルフォセラピー

昭和も終わりのころ、日本はバブル経済に湧いていた。企業だけでなく個人までもが我先にと株や不動産投資に奔走し、右肩上がりの経済を支えていたのである。
 そんな世相を反映してか、「24時間戦えますか」と唄うドリンク剤のCMも流行していた。その一方で働きすぎの企業戦士たちは、体だけでなく心までも消耗した挙句、心身症を患う人が増えて社会問題にもなっていた。


 心身症とは今でいえば精神的ストレスによるうつ症状のようなものだ。だがその大きな違いは、心身症は体に原因を求めるのに対し、現代のうつ症状は心の問題が先にくる点だろう。この違いは医療にとっても大きな変化であった。


 古代から、体と心のどちらに重きを置くかは医療における最も重要なテーマだった。古代ローマのユウェナリスは「健全なる精神は健全なる肉体に宿る(べきだ)」と説いた。これは昭和のころまでは医学的にも当たり前の話だと考えられていたのである。


 ところが20世紀に入ると時代は大きく変わった。ハンス・セリエがストレス学説を発表して以来、いつのまにか腰痛からがんにいたるまで、体の病気の多くは精神的ストレスが原因だとする説が主流になっていった。つまりこれは、精神さえ健全なら体も健全だといっていることになる。


 実際この考え方を反映するようなできごともあった。2011年に福島第一原子力発電所が爆発したとき、被曝の影響を恐れる人たちに向かって「笑っていれば(被曝しても)がんにはならない」と公言した有名な医師がいたのである。これではほとんどカルトの世界だろう。


 私はストレスが原因で病気になるなどという話を聞くと、子供が「治らないのはボクのせいじゃないもん!」といって責任逃れしているようにしか思えない。医師が「ストレスが原因だ」といい切った時点で、彼には治せない病気だといっているわけだから、彼の手でその病気が完治する見込みもなくなってしまう。


 しかし科学が進歩すれば、これまでストレス原因説によって見放されてきた疾患が治る可能性はある。
 たとえばセリエの説いたストレス学説の3大症状の一つに胃潰瘍がある。胃潰瘍は心身症の代表的な疾患でもあり、原因は精神的なものだと考えられてきた。しかも放置すれば将来胃がんになるといわれ、患者の多くは胃の切除手術を受けていたのだ。
 ところが1983年にロビン・ウォーレンとバリー・マーシャルらの発見によって胃潰瘍の原因はヘリコバクター・ピロリ菌だとわかったおかげで胃を取られることはなくなった。


 この事実はストレス原因説の根幹を揺るがす一大事件だったはずだ。だがその後もストレス学説を誤用したストレス原因説の勢いは一向に衰える気配がない。私が危惧するのは、精神的ストレスが原因だといって思考停止しているうちは、疾患の真の原因にたどりつく可能性がない点である。


 2005年に『腰痛は「ねじれ」を治せば消える』を出版したときも、こういった風潮に対して一石を投じたつもりだった。腰痛は背骨のズレによって起こるのであって、精神的ストレスが原因ではないと伝えることが本書のいちばんのテーマだったのだ。


 しかし社会の大きな潮流は、一度方向が定まると容易には変えられない。だれもがこぞって同じ方向に流されてしまうものらしい。それゆえ、私はこれまでストレス原因説を真正面から批判したものを見たことがない。


 知り合いの医師にも、精神的ストレスが原因だとされる病態の多くは背骨のズレによる症状だと話してみたことがある。するとこの医師は「その背骨のズレの原因はストレスではないのか」と切り返してきたのだ。ここまでくると、もはや信仰である。


 西洋ではデカルトの心身二分論(心身二元論)の登場以降、医学は科学として発展してきた。ところが日本の場合、曹洞宗の開祖である道元が唱えた「心身一如」の考え方が今でも根強い。さらに戦時中の教育による「心頭滅却すれば火もまた涼し」といった精神論も、一定の効力を保持している。これらが医療の現場でも悪影響を及ぼし続けているせいで、原因不明の疾患は患者の精神によるものだと決めつける傾向が強いのである。


 もちろん私は精神的ストレスの存在そのものを否定しているのではない。だれしも片思いの相手に会えば、心がときめいて心臓は激しく鼓動を打つ。だがその状態が続いたからといって、片思いで心臓病になると考えることにはむりがある。今の医学には、こういった原因と結果をこじつけたような話が多すぎる。要するに腰痛がストレスにはなるが、ストレスが原因で腰痛にはならないのだ。


 しかし医療者の圧倒的大多数は、背骨のズレによる症状の存在を受け入れないままである。そして彼らがストレスを持ち出してこのような空論を交わしている間にも、救われない患者の数だけがひたすら増え続けている。このことを念頭に置いて、われわれはモルフォセラピーの技術の向上だけでなく、理論の普及にも個々人で努力していかなければならないだろう。(花山 水清)


2021年11月03日 10時00分

「痛い」のは悪いことなのか

「肩こりは日本人特有の症状だからアメリカ人にはない」
昭和のころにはこんな話がまことしやかに語られていた。しかし英語にも stiff neck や stiff shoulders という肩こりを指す言葉は存在する。またそれらのこりをほぐすマッサージも人気があるようだ。


 英語ではこりの場所である首は単数形の neckで、肩は当然複数形の shoulders だが、膵臓がんなどの特定の疾患になると、なぜか左肩だけにこりが現れることが知られている。もちろん「アシンメトリ現象」は左半身だけ感覚が鈍くなるのが特徴なので、両肩をマッサージしてもらっても、左右同じ力でもまれているはずなのに、左肩は押されている感じが弱い。


 通常のマッサージなどでは、押されて痛いところが悪いと考える。だから痛い部分を重点的にもんでほぐそうとする。しかし「アシンメトリ現象」の場合は、本来感じるはずの痛みが消えている状態を異常だととらえる。従ってこの異常を解消するためには、まずは鈍くなった知覚を痛みを感じる状態にまで戻す。それからその痛みを取り去るのである。


 「アシンメトリ現象」の解消を担うモルフォセラピーでは、背骨のズレの矯正が手技の主体である。以前はズレの矯正のほかに、神経刺激という特殊な手技を用いて知覚の異常を取り去っていた。がんなどの患者は左半身の知覚が非常に鈍くなっているので、ある特定の神経をピンポイントで狙って刺激を加えることで本来の知覚を呼び覚ます必要があったのだ。


 この手技が奏功すると、今までいくら強く押しても「押されているのかな」という程度だった感覚が突然変化し、軽く触れただけでも飛び上がるような痛みを感じるようになる。この段階になって初めて、その痛みを取り去る作業に移ることができる。しかもがんのように、この工程を経なければ治らない疾患は意外に多いのだ。ところが医学上は、このような知覚の異常の変化については全く知られていない。


 がんの治療では、抗がん剤や放射線を使うと患者が激痛を訴えるようになることがある。この痛みは「アシンメトリ現象」の鎮痛作用が解除された結果であるから、がん治療の第一関門をクリアしたことになる。しかし現場の医師たちにはその認識がない。痛いのは悪いことだとしか考えないので、モルヒネなどを使って痛みを抑え込もうとする。だがそういった疼痛治療で感覚が鈍くなって痛みを感じなくなれば、また元の木阿弥なのだ。


 痛みとは体の内部から発せられる警報のようなものである。火災が発生したら、装置が作動して警報が鳴ってくれなくては困る。しかしせっかく警報が鳴り響いているのに、装置を解除しただけでは家は燃え続け、しまいには焼失してしまう。要するに痛みだけ止めて、それで症状が治ったと思うのは大きなまちがいなのである。健康を考えるうえでこの認識はとても重要だ。


 がんの痛みだと診断されている症状も、実際には背骨のズレによる発痛作用の結果であることは多い。鎮痛剤などで痛みだけ止めても、根本原因であるズレを戻さなければ、その影響は残る。痛みの原因がズレであれば、そのズレを矯正すれば痛みは消える。この点でもモルフォセラピーは有用だろう。


 現在のモルフォセラピーでは、神経刺激の手技は背骨のズレの矯正のなかに集約されている。こまめに背骨のズレさえ戻しておけば、「アシンメトリ現象」が引き起こす多くの疾患の予防になるからだ。しかしすでに重症化した疾患に対する神経刺激の即効性も捨てがたい。神経刺激は手技の難易度が高いので修得に時間がかかるのが残念だが、興味のある方にはぜひともチャレンジしてみていただきたい。そして皆でさらに手技を進化させることで、がんなどに対する画期的な治療法が確立すると私は信じている。(花山 水清)


2021年06月02日 10時00分

モルフォセラピーとは何か

カテゴリー: モルフォセラピー

モルフォセラピーとは何か。
一言でいうなら「アシンメトリ現象」を解消する療法である。


 では「アシンメトリ現象」とは何だろうか。
「アシンメトリ現象」は、人体の左側に現れる特異的な現象のことであり、おどろくほど広範囲の疾患と密接に結びついている。
したがってモルフォセラピーが対象となる疾患も、自ずと広範囲に及ぶ。
モルフォセラピーは、この「アシンメトリ現象」の原因となっている「背骨のズレ」を、手技によって矯正する療法なのである。


 私はこの「背骨のズレ」に規則性があることを発見した。
その規則性にのっとって矯正を行えば、だれがやっても同じ結果が出せる。
これが「モルフォセラピーには再現性がある」という意味なのだ。


 そして再現性とは科学の第一義でもある。
つまりモルフォセラピーは、「信じる・信じない」といった信仰や、まやかしを必要としない科学的な療法だといえる。
だから、私はだれにも「モルフォセラピーを信じなさい」とはいわない。
逆に疑いをもちながら実践し、施術を通して検証してみてほしいと思っている。


 そもそもモルフォセラピーは、「アシンメトリ現象」の解明がテーマである。
「アシンメトリ現象」の原因や成り立ちを解き明かすことによって、「アシンメトリ現象」を伴う腰痛やがんといったような疾患のしくみまで解明できると考えられるからだ。


 「アシンメトリ現象」は体の左側だけに現れる。
こういった左右差については、医学だけでなくさまざまな学問分野でも研究されてきた。
ところがそこでは、単なる左右差についてしか注目しない。
左だけ、右だけといった、側性にまで言及されることがないのである。
実は単に「左右差があること」と、その「左右差に側性まであること」とでは、問題の意味もレベルも全く違うものになる。
「アシンメトリ現象」の最大のポイントは、そこに「左だけ」という側性がある点なのだ。


 科学の世界では、自然現象のなかから対称性や規則性を見つけることが最も重要だとされる。
つまり「アシンメトリ現象」の発見とは、科学史に残るほどの大発見なのである。


 しかもこの発見は、医学的な問題だけにとどまらない。
何よりも重要なのは、「アシンメトリ現象」が示す左右の非対称性の意味である。
虫や鳥の絶滅種では、羽の長さなどが左右非対称になることがある。
これは生物学ではよく知られた事実だ。
そのため、ある生物が左右非対称になっていないかを調べることで、その環境の安全性の指標にすることもある。
これまでは人類がその調査の対象になったことはない。
しかし私は、「アシンメトリ現象」の存在は左右差の指標として最適だと考えているのだ。


 実際、この半世紀で「アシンメトリ現象」は急増している。
日本だけでなく地球のほぼ全地域においても同様だ。
これは「アシンメトリ現象」の原因となる物質が、地球環境中に増加しているからに他ならない。


 その原因物質はまだ特定できないが、状況証拠として考えられるのは、農薬や食品添加物などの化学物質、重金属、放射線の存在だ。
さらに現在は無害だとされる物質も影響している可能性はある。
それらが徐々に環境中に蔓延し、閾値に近づいたことで人体に直接影響が出るようになったのではないか。
「アシンメトリ現象」が急激に低年齢化しているのも、その結果なのである。


 それゆえモルフォセラピーが目指すところも、単に「背骨のズレ」が引き起こす個々の疾患の解消だけではない。
今後さらにモルフォセラピーの実践者が増えることで、「アシンメトリ現象」の問題に当事者意識をもった仲間も増える。
彼らの叡智を結集して、人類の危機に対処することが最終目標なのである。


(花山水清)


2021年05月27日 17時26分

モルフォセラピーの未来

カテゴリー: モルフォセラピー

 現在モルフォセラピーの会員は全国で500名以上にもなる。
そのうちプロとして登録して活躍している方も100名を超している。
まだ小規模とはいえ、「日本モルフォセラピー協会」が設立されて10年にも満たないのに、この数字は頼もしい。


 しかも昨年は、医師の関野吉晴先生を代表とする「モルフォセラピー医学研究所」が設立された。
当研究所では「アシンメトリ現象」の原因の解明が期待されている。
そこで改めて、私が思い描くモルフォセラピーの展望をお伝えしておきたいと思う。


 当初からモルフォセラピーの目標は「腰痛からがんまでを家庭で治せるようにする」ことにある。
その結果、モルフォセラピーは従来の民間療法の枠を越え、医療の概念を覆す、いわば革命となるものと認識している。


 従来は、病気には医療の専門家がその治療に当たっていた。
しかしモルフォセラピーの技術を用いれば、おどろくほど多くの病気が家庭や職場の身近な人の手によって気楽に対処できるのである。
これはだれもが理想とする形だが、現実にはあり得ないことだと思うだろう。


 ところがモルフォセラピーの最大の特徴は再現性にある。
モルフォセラピーにおける再現性とは、同じことをやればだれでも同じ結果が得られるという意味である。
もちろん技術の巧拙によって、結果に多少の違いはある。
しかし逆に、今日モルフォセラピーを覚えたばかりの人が、ベテランよりも鮮やかに治してしまう可能性もあるのだ。


 したがってモルフォセラピーが普及していけば、近い将来、治療の専門家の出番は減少する。
だが今後モルフォセラピーの習得者には、治療家としてだけでなく、技術普及の指導者として活躍していただきたい。
そしてモルフォセラピーを世界中の家庭へ伝える役割を担っていただきたいのである。


 さらにいえば、モルフォセラピーは未完の療法である点も認識しておきたい。
私は「アシンメトリ現象」の原因の解明とモルフォセラピーの技術開発に20年以上の歳月を費やしたが、「家庭でのがんの完治」にはまだ到達できていない。
ぜひ、その技術革新にもご協力いただきたいのだ。
協会の設立以来、加速度的に実践者が増えたおかげで、技術の進化速度も格段に向上した。
そこには無限の可能性があり、モルフォセラピーの将来には明るい展望がある。
 
 実は民間療法の世界では、小さなお山の大将の一代で終わる人が圧倒的に多い。
それは「自分が」「自分だけが」といった我欲に支配されて本質を見失うからだ。
モルフォセラピーの本質は利他の精神にある。
みながその自覚をもって共に学んでいけたら、そこには夢のようなすばらしい世界が待っていると私は思っている。


(花山 水清)


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