背骨がズレると胃下垂も起きる!? 

2023年03月01日 10時00分

背骨がズレると胃下垂も起きる!? 

カテゴリー: モルフォセラピー

その昔、長いつきあいの友だちと、健康談義で盛り上がっていたことがある。ふと思いついたように彼女のクチから、「アタシって胃下垂かしら」という声がもれた。


意表をつく問いに、思わず私は「胃下垂というのはたしか、やせ型で虚弱なタイプの女性に多いと聞いていたが、ハテ・・・胃下垂?」と聞き返しつつ、彼女の腹まわりにチラリと目をやった。すると彼女は、「あ、ワリ~ワリ~~、胃下垂じゃなくて胃拡張だ。い・か・く・ちょーだよ。いや~最近何を食べてもおいしくって、つい食べすぎちゃってサ~」と即座に訂正したのだった。


そういえば近ごろは、胃下垂という言葉をとんと耳にしなくなっている。私の親の世代までは、女性にとって胃の不調といえば、胃がんや胃潰瘍よりも胃下垂が一般的だった。下がった胃を持ち上げるために腹に巻く、胃下垂ベルトなるものまで売られていたのである。


胃下垂そのものは、単に通常よりも胃の位置が下がっているだけだ。それが重大疾患につながって、命取りになることもない。かといって、昔も今もその原因ははっきりとしているわけではない。


ヒトは胃だけでなく、全ての臓器が下垂する構造になっている。重力の法則に従って、だれでも加齢とともに、臓器だけでなく体中の組織が垂れ下がってくる。ただし、若くして臓器が下がってしまうことが問題なのだ。


やせて虚弱な女性が胃下垂になるのは、ある意味やむを得ないだろう。胃下垂による消化不良で、ますます虚弱になることもある。しかしこういった悪循環も、中年期を迎えるころには、自然に解消されていくのが救いともいえる。


先日、そんな虚弱体質の30代女性のKさんから相談を受けた。彼女は何か月にもわたって、胃の部分に不快感が続いていた。病院でも何度か調べてもらったが、特別な異常はなかったという。


このKさんのように、胃の不調で検査を受けても、異常が見つからない人は意外に多い。私の経験では、このパターンの人は胃ではなく、十二指腸に問題がある例が少なくない。だが病院では、患者から胃の調子が悪いと聞けば、胃だけを調べてすませてしまうようだ。


では、胃の部分に感じる不調の原因は、胃そのものだろうか、十二指腸なのだろうか。これは症状が出るのが食前か食後かによって、ある程度は判断できる。主に食前の空腹時に症状が出るようなら十二指腸で、食後なら胃の問題だと考えられる。


もちろん胃と十二指腸のあたりを、さわってみることでもわかる。そこに問題があれば、指に当たる感触としても異常が感じられるからだ。


さて先述のKさんも、病院で胃を調べて何もなかったのだから、不調の原因は多分、十二指腸だろうと私は思った。ところが本人の話では、症状が出るのは食後なのだという。そこで腹部をさわってみると、胃にも十二指腸にも炎症らしきものが見当たらない。


唯一の問題は、本来胃があるべき位置に胃がなかった点である。立ち上がった状態では、胃がおへその下まで落ちてしまっている。胃だけではなく、腸なども下腹部まで下がっていて、それはもう見事なまでの胃下垂なのだった。


実は彼女は、半年ほど前に出産を終えていた。胃の不調は、どうやらそのあたりから始まったようである。つまり妊娠中は、おなかの子供が下から胃を持ち上げていてくれたのだ。しかし出産すると、支えを失った胃は自力で持ち上げなければならない。ところがもともとKさんは虚弱な体質だったため、胃を支え切れなかった。こうして胃下垂になったことが胃の不調の背景にあるようだ。


ところがこれでは問題が解決しない。胃下垂だとわかったところで、医学上は、下がった胃を持ち上げる方法などないのである。ではどうやったら、胃を正常な位置に戻せるだろうか。


そこでまずは、彼女の背骨の状態を調べてみた。すると、第12胸椎が大きくズレていたのである。胃下垂でなくても、胃の不調を訴える人は、この部分がズレていることが多い。第12胸椎がズレると、ちょうど横隔膜の部分でひきつりが起こる。胃という臓器は、構造的には横隔膜にぶら下がっているだけなので、横隔膜の緊張が、そのまま胃の不調の原因にもなるようだ。


次に彼女の胸椎のズレを矯正してみた。すると明らかに胃の位置に変化が現れた。たしかに胃下垂にも、背骨のズレが関与していたのである。頸椎がズレると、手に力が入らないことがあるのと同じように、胸椎のズレによって、胃の周辺部が脱力していたのかもしれない。


また胸椎のズレの影響は、それだけにとどまらない。脱力して臓器が下垂するだけでなく、胸椎のズレによって、臓器や横隔膜にはひねりの力が加わる。その力で横隔膜が緊張すれば、そこに接している胃や肝臓だけでなく、横隔膜の上に乗っている肺の機能にも影響する。そうやって、それぞれが複雑に影響し合うことで、さまざまな形で疾患として現れてくるのだろう。


もちろんこれは仮説である。しかしたかが内臓下垂といえども、その背景に背骨のズレが関与している以上、そこから生じる不利益を見過ごすことはできない。あくまでもわれわれは最悪の状況まで想定したうえで、しっかりとズレの矯正に臨むようにしていきたい。(花山水清)


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