胸椎のズレによる心臓の異常はなぜ増えているのか

2022年02月02日 10時00分

胸椎のズレによる心臓の異常はなぜ増えているのか

昨秋(2021年)、厚生労働省から新型コロナウイルス感染症のワクチン接種による心筋炎への注意が呼びかけられていた。心筋炎とは、ウイルスなどによって引き起こされる心臓疾患であるが、この心筋炎とは別に、私が最近気になっているのは、心臓の異常を訴える人が増えていることだ。狭心症のように心臓の鼓動がトトトトッと速く打ち、それと同時に胸の痛みや息苦しさを感じる人がやたらに多いのである。


 狭心症はほとんどの場合、高血圧による動脈硬化が原因だとされている。しかし私が指摘している狭心症的な症状は、主に第4胸椎が左にズレていることが原因だ。
 胸椎がズレると肋骨が押し出されて体幹にひねりの力が加わる。第4胸椎がズレると、そのひねりの力は体幹の中心に位置する心臓にまで及ぶ。その結果、狭心症のような症状が現れるのである。


 また胸椎のズレによって肋骨が押し出されることで体幹に局所的なひねりの力が働くと、肋間筋が引きつる。これが息苦しさや胸苦しさなどの原因になっている。
 従って、そのズレている胸椎を正しい位置に戻すことでこれらの症状は消える。この事実から見ても、ズレと症状との因果関係は明らかだろう。


 実は狭心症が悪化した状態の心筋梗塞患者にも、この第4胸椎のズレが認められる。狭心症と心筋梗塞は虚血性心疾患としてくくられているが、これらの虚血性心疾患には第4胸椎だけでなく第1胸椎のズレも影響している。
 第1胸椎のズレが腕神経を刺激した場合、虚血性心疾患に見られる左肩や左腕への放散痛と同じ症状が出るのも偶然ではない。また第1胸椎のズレが頸動脈や椎骨動脈を圧迫して血流を阻害することで、動脈硬化の原因の一つにもなり得るのである。


 さらに第1胸椎が左にズレると、肋骨と連動して左の鎖骨が左へとズレるとともに、押し上げられる形で頭頂方向へも移動する。すると鎖骨の下を通っている心臓神経を直接刺激して、心臓に異常を引き起こす。
 ズレによる影響はそれだけに留まらない。左の鎖骨の下にはリンパ本管が流れ込む胸管があるため、ズレた鎖骨による圧迫がリンパ液の還流を悪化させ、より複雑な病態を引き起こすことになる。
 この状態が続くと左の鎖骨のくぼみが消えてしまう。これは「アシンメトリ現象」がかなり進行した状態の特徴で、目で見てはっきりと確認できる。


 しかしこのような胸椎などのズレが引き起こす心臓への異常が病院で指摘されることはない。私の印象では今や腰痛患者よりも多くなっているのに、腰痛とちがって一時的な症状であるため、いつしか本人も症状があったことすら忘れている。私から心臓に何か異常がなかったかと訊かれて初めて「そういえば…」と思い出す人が多いのだ。
 まして今現在、心臓に何の症状も出ていなければ、病院を受診しようなどとは思わないだろう。だがたまたまこれまで症状が出ていなかっただけなので、胸椎が大きくズレたままでゴルフなどで勢いよく体幹をひねってしまったら、突然死も起こり得る。


 それではなぜ胸椎のズレによる心臓の異常がこれほど増えているのだろうか。うがった見方をすれば、放射線被曝の影響も考えられる。
 チェルノブイリでの原発爆発の後、近隣住民に心筋梗塞が増えたことが知られている。福島第一原発の爆発事故から10年が過ぎた日本でも、すでに同様のことが起きていると指摘する人もいる。私にはそれが事実かどうかを確認するすべはない。しかし胸椎が大きくズレて心臓に異常を感じる人が増えていることだけはまちがいない。


 もちろん本来なら、ズレている背骨はことごとく正しい位置に戻すべきである。ところが胸椎の扱いはそれほど単純ではない。胸椎が大きくズレて心房細動を起こしているような場合、そのズレをいきなり戻してしまうと血栓が飛んで、何らかの臓器に塞栓を引き起こす危険性があることは知っておきたい。


 これは胸椎に限ったことではないが、背骨のズレの矯正は重大な結果を生むことがある。それを念頭において施術に臨むことが重要だ。ズレを見つけて戻すだけなら素人でもできる。プロであれば、患者の身体状況の全体像を見極めたうえで、このズレを戻していいものかどうか、そこから始めなくてはならない。そうやって常に思考しながら施術することで、原因の解明にも踏み込んでいただけることを願っている。(花山 水清)


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