「自分の体は自分で治す」のがモルフォセラピーの目標

2022年07月06日 10時00分

「自分の体は自分で治す」のがモルフォセラピーの目標

カテゴリー: モルフォセラピー

私は毎月、バスと電車と飛行機を乗り継いで、ちょっとした小旅行レベルの出張を繰り返している。その先月の出張の際、バスに乗り込んだ私は、動き出したバスのなかで腰にわずかな違和感を覚えた。先週の庭仕事で傷めた腰がまだ治りきっていないのだろう。そう考えた私は、大して気にもせずにそのまま空港行きの電車に乗り換えた。


ところが電車が予定通りに動き出した途端、腰に衝撃が走った。とんでもない激痛である。電車が揺れるたびに「ギャッ」と声が出そうになる。しかし月曜朝の車内は通勤客で混み合っている。自分の腰に手を回して矯正することなど、とうていできそうもない。しかも、あまり苦しそうな顔も見せられない。親切な人が電車を止めてしまうかもしれないので、私は平静を装った。


だが強烈な痛みは次第に度合いを強めていった。額には脂汗が流れる。しまいには吐き気までしてきたが、それでも襲い来る痛みをじっとがまんした。そうやって1時間半耐え抜いて、やっと空港のある終着駅に着いた。


それなのに私には立ち上がることも歩くこともできない。他の乗客が全員降車したあとのガランとした車内で、しばらく思案する。このまま折り返して帰るしかないのか。いや、そうもいかない。今日から一週間の予定が頭をよぎった。そこで意を決して、そばにある手すりに手を伸ばす。転倒だけは避けたいので、体を支えながら立ち上がる。また痛みとともに汗が吹き出る。それでもにじり出るようにして、何とか電車から降りることができた。


そうしてやっとのことで腰に手を伸ばし、この強烈な痛みの原因となっている背骨のズレを探す。すでに腰全体が熱をもって腫れ上がっていた。やはり相当な重症である。どうやらズレているのは1か所ではなさそうだ。腰椎だけでなく仙腸関節まで大きくズレていた。


いつもなら自分の腰などおざなりな矯正しかしないが、今日は真剣だ。ズレたところを根気よく何往復も矯正し、かろうじて歩けるまでになった。その一部始終を興味深げに見ていた売店のおばさんも、歩き出した私を見て安堵の表情を浮かべていた。


あとは飛行機の出発時刻まで十分時間があるので、ひたすら歩くことでリハビリに努めた。その甲斐あって、無事に予定通りの便に搭乗できた。とはいえ、飛行機もよく揺れる。機内でズレがぶり返すことは目に見えていたので、また自分で矯正できるように広めのシートに予約変更できたのは幸いだった。


さてやっと羽田に着いたと思ったら、また電車に乗らねばならない。いつもなら遠慮がちに座るシルバーシートだが、今日はそういうわけにはいかない。周囲の若者を目線で威嚇しながら、堂々と座らせてもらう。そんなこんなでようやく事務所にたどり着いたときには、ほとほと疲れ切っていた。


だが、これがモルフォセラピーなど知らない人だったら、この程度ではすまない。電車のなかで動けなくなったのだから、担架で救急車に乗せられて、そのまま入院することになっただろう。土壇場での予定キャンセルは、多くの人に迷惑をかけることにもなる。そうならずにすんだので本当に助かった。おかげで今回は、わが身をもって改めてモルフォセラピーの威力を認識できた。また、歩けることのありがたみもつくづく思い知らされた。


そういえば以前、私が乗るはずだった飛行機が機長急病のため欠航になったことがある。ひょっとしたらあの機長も、私のようにぎっくり腰で動けなくなったのかもしれない。もしそうだったら、飛行機が飛び立ってからでなくてよかった。


パイロットにかぎらず、だれでも急な腰痛で動けなくなれば大変なことになる。救急搬送されてしまう人も大勢いるはずだ。しかしモルフォセラピーの技術を知っていれば、そんな状況でも自分の手でどうにかやり過ごすことができる。別に自分でなくても、そばにいるだれかに背骨のズレを矯正してもらえばすむ。職場の同僚でもいいし、学校の同級生でもいい。もちろん家族同士で矯正するのがもっとも効率がいいだろう。だからこそ、モルフォセラピーは家庭内での実践を特に推奨しているのである。


私は常々「自分の体は自分で治す」のは「自分の身は自分で守る」のと同じで、生き方の基本だと思っている。だが最近の日本ではこの考え方は通用しない。すぐに他人に頼ろうとする人が多いようだ。この傾向は医療では特に顕著だろう。だからちょっと調子が悪いとあわてて病院に駆け込む。周りの人も当然のように病院での検査を勧めてくる。そして医師から「問題ありません」の一言を聞くために、多大な労力を費やすことになる。


実はこのように日本人が何かにつけて病院に頼るようになったのは、ごく最近のことである。1961年に国民皆保険制度が運用され始めた当時は、多くの国民はなかなか病院へ行こうとしなかった。そこで考え出されたのが、定期健康診断制度である。この制度の導入を境に、だれもが健診の結果に一喜一憂し、結果が悪ければ自動的に通院するようになった。その甲斐あってか、今では病院で検査さえしてもらえば病気予防になると錯覚するようにまでなった。つまり、みなが病院依存症患者になったのだ。


こうなると体のことは全て医者任せで、患者は指示に従うだけのものになってしまった。これは見方によっては異常な状況だ。自分で自分の体のことがわからないのは、他人に「私は今どこか痛いところがありますか」とたずねるようなものである。

本来なら人間は自分の体の異常は自分で感じ取り、自分で対処するのが当たり前だ。そういうと、「そんなこといわれてもどうすればいいのかわからない」、「もしものことがあったらどうするんだ」と不安がる。


ところが「アシンメトリ現象」の成り立ちを理解して、モルフォセラピーを実践すれば、かなり広範囲の不調にも自分で対処できるようになる。そうするとよほどの感染症や大ケガでもない限り、医療に頼る必要がなくなる。その結果、本当に必要な人だけに適切な医療が行き渡る。これこそがモルフォセラピーの目指すところであり、真の社会貢献になると私は思っている。(花山 水清)


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