ペットの医療にもモルフォセラピーを
あなたはペットを飼ったことがあるだろうか。私が子供のころのわが家では、動物好きだった父が連れ帰ったイヌ・ネコ・ニワトリにヒツジまでいて、母は彼らの世話に明け暮れていた。
ペットの好みは、大きくはイヌ派とネコ派に分かれるものらしい。どちらかといえば私はネコ派だが、正確にはイタチ派である。イタチ科のフェレットは、イヌとネコの良いところをあわせ持ったような性格で、たいそうかわいい動物なのだ。しかしイヌ・ネコよりも寿命が短くて、だいたい5年程度で死んでしまう。
昔はイヌやネコもその程度の寿命だった。だが専用のペットフードを与えることで寿命が伸び、今では20年ぐらい生きるものもいる。また最近はニーズが増えたせいか、ごく小さな町にも動物病院があり、ヒトと同じように手厚い医療を受けられるようにもなった。私が子供の時分には、ペットフードだの動物病院だのというのはアメリカのホームドラマのなかだけで、全く別世界だった。
そもそもイヌは番犬、ネコはネズミを捕るものであって、彼らは家畜同様の使役動物だった。ところが今ではペットというよりも、家族の一員として地位が向上した。その序列も、「士農工商・イヌ・ネコ・お父さん」といわれるまでになった。今回はそんなイヌ・ネコの話である。
先日、モルフォセラピーの実践者で、たいへんな愛犬家の女性がある動物病院の話を教えてくれた。東京都内で動物病院を開業しているSさんは、モルフォセラピーの講習を修了した獣医師だ。彼はそのモルセラの技術を、来院患者である動物たちに応用している。その結果、みるみるうちに動物に使う薬の量が減り、手術の回数も少なくなった。あまりにも買い入れる薬の量が減ったので、いつも仕入れている薬屋さんからは、仕入先を別の業者に切り替えたのかと訊かれたほどだという。
確かモルフォセラピーの名称が形態矯正だったころにも、この技術でイヌの腰痛を治して評判になっていた人がいた。ネットで調べてみると、他にもモルフォセラピーでペットを治療している人がいるようだ。しかし専門の獣医師が、ここまで本格的にモルセラを取り入れて動物を治療するのは、初めてのことではないだろうか。
イヌ・ネコといえども、彼らの体の構造に人間とさほどのちがいはない。したがって、罹患する病気の種類も人間とかなり似通っている。まして人間同様の長寿になれば、がんを含めていわゆる成人病になるリスクも増えてくる。
また条件さえそろえば、イヌやネコの体にも「アシンメトリ現象」ははっきりと現れる。特に「アシンメトリ現象」の疾患の代表格ともいえる腰痛は、イヌやウマではごく一般的な疾患なのである。
近ごろは、人間が腰痛で病院に行けば、その9割は精神的ストレスが原因だと診断されてしまう。それでは動物の場合も、腰痛ならカウンセリングでも受けたほうがよいというのだろうか。
だが実際には、動物の腰痛も背骨のズレを矯正すれば症状が消えることが多い。先述の愛犬家の女性も、自分のイヌの背骨のズレを見つけたら、速やかに定位置に戻すようにしている。相手が動物であっても矯正方法には何のちがいもない。唯一のちがいといえば、動物にはプラセボ効果が期待できない点である。
プラセボ効果とは、薬理効果のない偽薬を与えても、一定の割合で治療効果が認められることだ。人によっては、白衣を来たお医者さんに診察してもらっただけで症状が消えることもある。ところが動物には、そのような思い込みは全くない。人間のように、治ってもいないのに治った気になることなどない。
そういえば昔、ある国立大学の有名なサイエンス系の教授が、奥さんに連れられて来院したことがあった。彼は腕にひどい痛みとしびれを抱えていたが、T大病院のえらい先生方に診てもらっても全く治らなかった。そこで奥さんにいわれて、渋々私のところにやって来たのである。
天下のT大病院で治らないものが、病院でもないところで治るはずがない。彼でなくても、そう思う人は多いだろう。だがT大病院の見立てがどうあろうと、彼の腕の症状は単なる頸椎のズレが原因だった。だからそのズレを何回か矯正しただけで、すっかり症状も収まった。
ところが当の本人は、喜ぶどころか納得がいかないので機嫌を悪くした。T大病院の権威が治せないのはまだ理解できても、権威も何もないところで治ってしまうことなど受け入れがたいのだ。科学者としてのプライドが傷ついたのか、私に向かって不快感をあらわにして見せた。その態度を見て、奥さんからこっぴどく叱られていた彼の姿を思い出す。
全くもって人間とは厄介な生き物である。その点、動物はプライドが邪魔することなどない。感情を抜きにして、治ったかどうかだけが問題だ。ある意味では人間よりも科学的に生きられるから楽だろう。
とはいえ、ペットのケアも人間並みにどんどん高度になっている。その分、治療費もかさんでくる。ペットには健康保険が適用されないので、全額実費である分、飼い主にとっては痛手である。その点、モルセラなら治療に大金を払うようなことはないはずだ。薬も外科手術もないのだから、ペットにも負担がない。練習すれば、飼い主が直接自分の手でケアできるようにもなる。それなら時間的にも負担が少ない。これはいいこと尽くめだろう。
われわれは世界中の家庭で、家族の手でモルフォセラピーを実践してもらうのが目標だが、今後はその対象は人間だけでなく、ペットにも広げることを目標に加えてもいいかもしれない。そう考えただけで、私は何だか楽しくなってくるのである。(花山 水清)
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